ケトン革命

適度な活性酸素

酸素は生きるために必要なことは、息を止めれば、いや止めなくても誰でもわかることだ。
しかしながら、普段我々が呼吸している大気には、20%の酸素しか含有されていない。
この20%から活性酸素が生じ、1日当たり1つの細胞で10万か所以上も遺伝子は傷つき、老化やガンを誘発する原因ともなるが、前回に紹介したように幸いにも活性酸素を減らすことが可能である。
減らすことが可能なら、無くすことは無理なのかと疑問を持ったことがあるが、ジョセフ・マーコーラ著「Fat for Fuel」には、過剰な活性酸素が健康を害すが、活性酸素が皆無なことも健康を害すとして、活性酸素が与える健康面への効能をサラッと紹介している。
1.多くの重要な細胞機能を調節する。メラトニン、一酸化窒素の生産
(以下「・」は吾人の加筆です)
・メラトニンは眠りを誘うホルモンとして有名だ。
最近サーカディアンリズムという言葉を聞くが、これは日本語にすれば概日リズムと呼ばれる体内時計で、光や温度、食事など外からの刺激に応えて体内でリズムを刻むもので、これはメラトニンと持ちつ持たれつの関係であるようだ。
朝日を浴びればメラトニンの分泌は減少し、夜暗くなった時に分泌が増え、脈拍・血圧・体温を低くする働きがあり、「おやすみ」へと誘ってくれる。
そして、このメラトニン分泌のリズムが、体内時計をより良く機能させ、この機能の良さが日々のメラトニンの分泌をしやすくする規則性をもたらして、不眠症や睡眠障害を近づけない効果が生まれるのだ。
・また、メラトニンには抗酸化作用がある。
これが面白いもので、メラトニンはケトン体のように血液脳関門を通り抜けるほどのVIPぶりで、メラトニン生産に一役買っている活性酸素を減らすことに一役買っているというのだから、活性酸素にはたまったものではない。
少量の活性酸素から生まれ、大量の活性酸素を処理するとは、入り乱れた人間関係のような存在だが、我々人体の健康を保つという大義名分がある。
・次に一酸化窒素は外部のものは有害であるが、体内で生産されるものは動脈硬化を防ぐ効果があるようだ。
血管をしなやかにして拡張し、血液をきれいに、サラサラにするとのこと。
2.代謝経路の最適化。空腹感、脂肪貯蔵、老化の統制
3.外部からのストレス要因、喫煙や毒素、ケミカルなどに生物学的シグナルの反応を示す等。
と、このように、まるでケトン体のように代謝経路や神経伝達機能を潤滑にさせる働きがあるとは、適量の活性酸素は捨てたものではない。
ある程度の活性酸素も大事であり、多ければ毒、適量は薬に変ずるとは摩訶不思議なところで、ミネラルにしても栄養素にしても、また最近一部で毛嫌いされている糖質にしても、それぞれに微妙なバランスを保つ上で健康になるとは、さながら人体は中道の塊であり、最上の芸術である。

酸素が幾分少なくなる高山地域の人たちは、体内の酸素供給のために赤血球が増え、ケトン体と共存できることを以前に紹介したが、1984年の実験で、低酸素症のラットの脳では血中ケトン体の量が増え、排出される二酸化炭素の量が減ったとあり、脳はケトン体代謝を好むと指摘している。
そして、2005年の実験では、低酸素症の脳では解糖作用と乳酸塩を蓄積する働きがあるが、それはブドウ糖代謝の体質で、問題のケトン体質の場合は逆にケトン体が増え、乳酸のレベルは減少し、そのことが解糖作用減少にも繋がり、ブドウ糖の処理が早まる傾向にあるとの結果が報告されている。
つまり、酸素の少ない状況ではケトン体が増え、脳は好んで、できるだけ早くケトン体を代謝できるように働きかけるとのことである。
正直言って、上記のデータは双方とも動物実験であるが、アメリカ海軍の潜水部隊がケトンサプリでケトン人となり、潜水時間が2倍に伸びたことを、拙著『ケトン人』を読んでいただいた方は思い出されることであろう。

最近一部のケトン・コミュニティーで、ケトン王と称されるようになった南フロリダ大学のドミニック・ダゴスティーノ助教授(ドム博士)が、10年ほど前、国防省からの依頼で行った研究で、依頼の件は低酸素症ではなく、逆の高酸素使用による職業病問題の解決であった。
いわゆる酸素中毒症なるもので、高圧酸素ボンベを使用する隊員たちに酸素中毒症の発作が多発し、ケトンサプリの使用によって全てが解決したもので、この場合、酸素の濃度の高いことから活性酸素が増え、ケトン代謝によって活性酸素が減少し、高圧酸素ボンベ使用時の潜水時間の延長と、酸素中毒症発作の回避が導き出された。
それと同時に、酸素ボンベ無しの潜水時間の延長も記録されたのだ。
通常、高圧酸素療法でも3気圧が限度のようで、ダイバーが5気圧の酸素で、水深にすれば40メートルをダイブすれば、通常10分で痙攣発作を起こすのが、ケトン人となったダイバーは1時間以上潜水できるようになったとのこと。
この他、助教授は高圧酸素下でのミトコンのケトン代謝も観察したり、微に入り細を穿った研究を動物・人体の両方で行い、ベータヒドロキシ酪酸に抗発作作用がある事を突きとめた。
そして、数々のインタビューでは、ケトン体は低酸素症と酸素中毒症の双方に対応することを明言し、目下低酸素症における認識機能を研究中らしい。

国防省からの研究依頼の後、今度はNASAから有人火星探査計画の調査協力を依頼された。
これも酸素中毒症対策で、宇宙船内・宇宙遊泳・火星での探査活動と過酷な環境下にケトン体が頼みの綱となってきているようだ。
また、酸素対策だけではなく、宇宙遊泳中に浴びる放射線に対し、ケトン体は抗放射線作用があるとドム博士は述べている。
この抗放射線作用に関してはドム博士が最初ではなく、拙著『ケトン人』でも紹介したが、1960年代にジョージ・ケイヒル、リチャード・ヴィーチ博士がすでに発見していたが、今日まで、大々的に取り上げられることがないのが不思議でならない。
が、原発被爆よりもガン治療の分野では、注目され出してきているのは事実である。

ドム博士の研究は、ケトン食ではなくケトンサプリ=ケトン・エステル(液)やケトン塩に重きがおかれ、ケトン値を高めに保って為されている。
高いと言っても5∼8ミリモールで、ケトアシドーシス値の半分。
またこれほどのケトン値でなければ、抗作用が確実に行われないのであろう。
しかし健康維持の面では、MCTオイルからはじき出される値で十分であると、あちらこちらから聞かれる。
博士のチームは更なるケトンサプリやケトンスナックを開発していると共に、ドム博士のホームページ(https://www.ketonutrition.org/)をご覧になればわかる通り、諸々の難病に対してのケトン体の反応や効能の研究が、その本幹であるようだ。
例えばResearchの紹介欄には

「私たちの研究プログラムは、中枢神経系酸素中毒性(発作)、てんかん、神経変性疾患、脳腫瘍および筋萎縮関連の運動ニューロン(神経)疾患および癌の代謝療法の開発および実験に焦点を当てています」

とあり、将来動かしがたい検証データが日増しに残され紹介されている。
ドム博士いわく

「あなたの脳でケトン体を燃焼する時、ガスパイプから排出される炭素が減り、更なる馬力がエンジンから放出されます(筆者訳)」

ところで、適度な活性酸素とはどれほどの量であろうか?
一人当たり何グラムと正確には言い難いが、ここではケトン人となった時の活性酸素量が適度な量と、言っても差し障りは無いであろう。