ケトン革命

飽和脂肪酸メタ解析

今週、「糖質制限は危険だ」との警告を発した記事を2件ほど閲覧させていただきました[1][2]

どちらも、すでに否定されている仮説を基にした内容であり、バイアスさも顕著で、殊にお医者さんが書籍を出版されて公言していることに、うんざりしてヤッフーにてコメントをさせていただきました。

このコメントに関して、「待ってました!」とばかりに反論が寄せられたので、このブログにて、詳細を紹介したいと思います。

まず、コメントは字数が400字と制限されていたのでカット版であり、カットされた文章に色を付けて以下に紹介いたします。

三大栄養素のバランスが取れた食事が大事だとされ、糖質を極端に制限するのは良くないとのことですが、三大栄養素の中で必須炭水化物(糖質)というものは存在していません。

「必須」とは体内で産生できないため食事として補うことが必要な栄養素で、これには必須アミノ酸と必須脂肪酸があり、糖質から産生されるグルコースは、体内で産生できるので糖質ゼロでも問題はありません。

しかも血糖値を上げる(スパイクさせる)唯一の栄養素は糖質だけなのです。

人類学では人類は肉食で進化したことは主流であり、ウェストン・プライスの本にみられるように、糖質ゼロの生活をしていたマサイ族やイヌイットなどの原住民族には、循環器疾患や糖尿病などの慢性疾患はほとんど存在していません。

 

糖質制限の長期的データは無いとのことですが、アメリカのVirta Health は、2型糖尿病患者に少なくとも2年以上の糖質制限食を施し、55%の患者さんが寛解したとのデータをすでに発表しています。[3]

日本の糖尿病学会は糖質制限に懐疑的なようですが、それは、WHOのように、科学的な理由ではなく、スポンサーへの忖度が一番の理由ではないでしょうか?

また飽和脂肪酸は循環器疾患の原因と断言されていますが、エビデンス度の一番高いメタ解析データでは、飽和脂肪酸と循環器疾患の関係性は否定されており、肉と大腸がんの関係は、エビデンス度の一番低い観察研究のデータまたは発がん性物質を注入したマウス実験のバイアスデータであり、臨床的データは存在せず立証もされていません。

また、ケトーシスが異常状態であるというのは、科学的データに基づいた意見ではなく、筆者の私的意見であることも指摘しておきます。

 

次にエビデンス度の高い10点の研究報告または論文と、それらの報告を要約したものを紹介いたします。

1.「Time for a New Approach to Reducing Cardiovascular Disease: Is Limitation on Saturated Fat and Meat Consumption Still Justified?」2020年  https://www.amjmed.com/article/S0002-9343(20)30351-X/fulltext

この論文は、飽和脂肪酸に冤罪を着せた半世紀前の経緯を簡単に述べ、2010年の疫学研究のメタアナリシスで、食事の飽和脂肪が心血管疾患のリスク増加と関連していると結論付けるための有意な証拠がないこと、飛んで2014年の系統的レビューとメタアナリシスをで、飽和脂肪の摂取量が多い人は心臓病や突然死のリスクが高くないことが示された研究報告を紹介しています。

そして、2020年2月10〜11日、ワシントンDCで行われたワークショップ「飽和脂肪:食品または栄養素のアプローチ?」での報告を取り上げ、食事による飽和脂肪摂取が心血管または総死亡率に及ぼす影響についての有意な証拠はないことと、 さらに、飽和脂肪の摂取が脳卒中のリスクに反比例する可能性があることを紹介し、 一部の個人では、総低密度リポタンパク質コレステロールの増加が発生する可能性がありますが、この増加は主に、心血管疾患との関連性が低い大きな粒子で発生するので、心血管疾患と関連強いLDLではないことを強調しています。

そして、米国で一般的に推進されている、飽和脂肪酸の恣意的な上限が心血管疾患を予防したり、死亡率を低下させたりするという証拠はありませんと断言されています。

 

また、飽和脂肪酸と関係が深い赤肉に関しても、赤身の肉の摂取が心血管の危険因子に及ぼす影響を評価するランダム化比較試験は一貫性がありません 。

「Total red meat intake of ≥0.5 servings/d does not negatively influence cardiovascular disease risk factors: a systemically searched meta-analysis of randomized controlled trials」 2016年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27881394/

カナダのオンタリオ州にあるマクマスター大学の研究者は、観察研究とランダム化臨床試験において、赤身肉製品と加工肉製品を心血管疾患と癌に結び付ける証拠は非常に弱いと報告しました。

「Effect of Lower Versus Higher Red Meat Intake on Cardiometabolic and Cancer Outcomes: A Systematic Review of Randomized Trials」 2019年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31569236/

「Patterns of Red and Processed Meat Consumption and Risk for Cardiometabolic and Cancer Outcomes: A Systematic Review and Meta-analysis of Cohort Studies」 2019年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31569217/

と、全てメタ解析データを引き合いにして、観察や動物実験による「肉とガンの関係性」の証拠の薄さを指摘しています。

 

2.「Dietary saturated fat and heart disease: a narrative review」2020年  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31841151/ 

この論文は、最近アメリカ心臓協会(AHA)が発表したメタ解析への批評です。

AHAは『ケトン人3』で紹介した通り、心臓病のリスクを減らすために飽和脂肪酸を制限し、多価不飽和脂肪に置き換えるという多価派であります。

 9件の観察研究と10件のランダム化比較試験のメタ解析が存在し、 観察研究のメタ解析では、飽和脂肪酸摂取量と心疾患との間に関連性は見られず、ランダム化比較試験のメタ解析では一貫性が無く、関連性がないことが示される傾向が強いとのことです。

AHAメタ解析には4つの試験(コア試験)のみが含まれ、それらの試験には設計および方法論の欠陥が含まれており、事前定義されたすべての包含基準を満たしていませんでした。

心臓病予防のために飽和脂肪酸を制限するというAHAの立場は、誇張されており、再評価が必要な場合があります。

 

3.「Saturated Fats and Health: A Reassessment and Proposal for Food-Based Recommendations: JACC State-of-the-Art Review」2020年  https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109720356874 

では、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことによる心血管疾患と総死亡率への有益な効果は見られず、代わりに脳卒中に対する保護効果が見られました

 

4.「Reduction in saturated fat intake for cardiovascular disease」2020年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32428300/ では、飽和脂肪の減少は、心血管死亡率、すべての原因による死亡率、致命的でない心筋梗塞、または冠状動脈性心臓病死亡率にほとんど、または全く影響を与えませんでした。

 

5.「Evidence from randomised controlled trials does not support current dietary fat guidelines: a systematic review and meta-analysis」2016年 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4985840/ 

1977年と1983年にそれぞれ米国政府と英国政府によって導入された食生活ガイドラインは、食事脂肪摂取量を減らすことによって冠状動脈性心臓病の死亡率を減らすという目的でしたが、入手可能な全てのエビデンスによれば、食事脂肪の介入によって、すべての原因による死亡率または冠状動脈性心臓病死亡率に違いは見られなかったとのことです。

 また現在入手可能なランダム比較試験の証拠は、現在の食事脂肪ガイドラインをサポートするのに充分な証拠が無いとのことです。

 

6.「Intake of saturated and trans unsaturated fatty acids and risk of all cause mortality, cardiovascular disease, and type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis of observational studies」2015年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26268692/

飽和脂肪は、死亡率、心血管疾患、冠状動脈性心臓病、虚血性脳卒中、または2型糖尿病のすべての原因と関連しているわけではありません。

7.「Association of dietary, circulating, and supplement fatty acids with coronary risk: a systematic review and meta-analysis」2014年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24723079/ 

現在のエビデンスは、多価不飽和脂肪酸の大量消費と総飽和脂肪の低消費を奨励する心血管ガイドラインを明確にサポートしていません。

8.「Effect of the amount and type of dietary fat on cardiometabolic risk factors and risk of developing type 2 diabetes, cardiovascular diseases, and cancer: a systematic review」2014年 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4095759/ 

インスリン感受性と空腹時血漿/血清インスリン濃度の両方に対する一価不飽和脂肪酸の有益な効果は、一価不飽和脂肪酸と炭水化物対飽和脂肪酸の比較で可能性が高いと見なされましたが、これらの比較では空腹時グルコース濃度に影響は見られませんでした。

総脂肪摂取量と2型糖尿病のリスクとの直接的な関連の証拠は決定的ではありませんでした。

総脂肪摂取量とBW(体重)の間に中程度の直接的な関連があるという可能性のある証拠がありました。 さらに、SFA(飽和脂肪酸)をPUFA(多価不飽和脂肪酸)に部分的に置き換えると、特に男性において、CVD(心血管疾患)のリスクが低下するという説得力のある証拠(筆者㊟血中コレステロール濃度は飽和脂肪酸では上昇し、多価派では減少するのは自然な生理反応であります)がありました。 この発見は、PUFA摂取のバイオマーカーとの関連によって裏付けられました。 食事の総PUFA、n-6 PUFA(オメガ6脂肪酸)、およびリノール酸がCVD死亡率に及ぼす有益な効果の証拠は限られていました。

脂肪が主要な種類の癌に及ぼす影響の証拠は、食事脂肪の量と質の両方に関して決定的ではありませんでした。

 

9.「Meta-analysis of prospective cohort studies evaluating the association of saturated fat with cardiovascular disease」2010年 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2824152/ 

疫学研究のメタアナリシスは、食事の飽和脂肪が冠状動脈性、脳卒中または心血管疾患のリスク増加と関連していると結論付けるための有意な証拠がないことを示しました。

 

10.「飽和脂肪酸のどこが悪い? 生活習慣病に対する飽和脂肪酸悪玉説の検証」2008年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/8/10/8_421/_article/-char/ja/ 

この論文は世界に先立って、多価不飽和脂肪酸の害を断言した歴史的論文であると信じています。

是非ともリンクをポチって全文を読んで頂きたいと思います。

 

本日はこんなところで充分でしょう。

時間があれば、下記の資料も。

「5 Studies on Saturated Fat — Time to Retire the Myth?」2020年 https://www.healthline.com/nutrition/5-studies-on-saturated-fat

「View: Should saturated fat be back on the menu?」2020年 https://hospitalhealthcare.com/clinical/cardiovascular/view-should-saturated-fat-be-back-on-the-menu/


[1] 「痩せたい人は糖質制限しすぎない方が良い?その理由と上手に食事するコツ」https://yogajournal.jp/8918 

 

[2] 「糖尿病なのに「糖質制限に挑戦した男」の大失敗 最悪の場合「心筋梗塞」「脳梗塞」に陥るリスクも」https://toyokeizai.net/articles/-/421438 

 

[3] Two Year Clinical Trial Outcomes Provide Evidence for Long-Term Benefits of the Virta Treatment for Type 2 Diabetes 2019 https://www.virtahealth.com/blog/2yr-t2d-trial-outcomes-virta-nutritional-ketosis#:~:text=Among%20Virta%20Treatment%20participants%20still,status%20or%20other%20health%20markers.