睡眠と魚食

 

【うんざり】

今週(8月5日~11日)はケトン人ではなかった。

ビールを飲み、チャーハンも食べ、餃子とシューマイ、ドーナツやスイーツを食べた。

仕事に戻り、教室や廊下のペンキ塗りを任され、トレーニングも定期的に行ったことが、食欲旺盛をもたらしたのだろう。

活発に動き、豪快に食べ、思いっきり眠る毎日でなんとか生き延びている。

ここでまたステントの痛々しい話しを繰り返す。

これはなにも悪趣味ではなく、決して望んでいることでもなく、読者の中で現在同じ体験をされている方や、もしかしたら将来ステントの体験をされる方がいて、そのような方々へのいくらかの参考や励みにでもなればとの思いで綴らせていただいている。

動き過ぎ、特にトレーニング後は決まって血尿で、数時間休めば尿の色は正常になる。

赤肉の食べすぎ、また三大栄養素の摂りすぎは排尿時に焼ける症状が起こる。

これらの副作用を最小限にとどめる為に大事なことは、なによりも無理をせず「過ぎない」ないこと。

個人的には、ジッとしていられない吾人にとっては、18時間以上の不食と頻繁に水を飲むことが大事である。

特に、腎臓を労わるには水分補給は必須であり、脱水状態を避けねばならない。

水分補給によって、毎晩夜中に何回が起きてなが~いション便をするステントの副作用はすぐに慣れるが、血尿と排尿時の焼ける感覚、まるで性病;STDのようなもうひとつのステントの副作用に慣れることは無い。

しかしながら、充分な水分補給が功を奏してか、翌朝には性病のような症状は消えているものだ。

以上、水分補給以外のことは個人差があるもので、一応参考として述べておいた。

皆さんステント話でうんざりであろうが、当の本人がうんざりで、いつ病院から声がかかるかと一日千秋の思いで待っている。

 

 

【研究デザイン】

ところで、吾人は健康を真剣に考えるようになり、生物学系に頭を突っ込んで2年そこそことなった。

よく研究論文を読んでいると、コーホート研究やらメタアナリシスなどと目にするので、復習も兼ねてここで簡単におさらいしておきたい。

エビデンスの高い順から羅列していくと;

1.システマティックレビュー;systematic review

2.メタアナリシス;meta-analysis

3.ランダム化比較試験;RCT randomized controlled trial

4.非ランダム化比較試験;N-RCT non-randomized controlled trial

5.コーホート研究;cohort studies

6.症例対照研究;case control studies

7.横断研究;cross sectional studies

8.症例報告/ ケースシリーズ;case report/ case series

9. ナラティブレビュー/ 専門家の意見;narrative reviews/ expert opinions

10. 動物実験や実験検査(人が関与しない);animal and laboratory studies (in vitro)

 

研究デザインに関しては、他にも前向き、後ろ向き、観察研究、介入研究、縦断研究などといろいろと存在するが、今後、自身の学習を踏まえ折あるごとに説明を加えるので、今回ここでは割愛しておく。

次に論文の構造として;Abstract 要綱、Introduction 緒言、Method 方法、Result 結果、Discussion 考察となっているが、吾人はほとんど要綱で済ましている。

 

https://www.shien.co.jp/book/sample/s3/7556.pdf

http://www.jsprs.or.jp/member/committee/module/06/101105/guideline_design.pdf

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Research_design_and_evidence_ja.svg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Research_design_and_evidence.svg

 

 

【魚を食べればよく眠れる?】

さて、これから本題へと入っていくが、今回は、吾人のポッドキャスト図書館にある「心理学ニュース」からの話題だ。

前回、「魚を食べる子供はよく眠る記事」なるものを紹介したが、実はこれは2018年7月29日付けの心理学ニュースのトピックであったのだ。

トピックの素材となった研究は、2011~2013年に中国の江蘇省金壇区で行われた縦断研究(対象者を2回以上一定期間追跡調査)、ペンシルバニア大学によるコーホート(ある共通の特性を持つ集団)研究で、題して「魚の消費と認知機能との関連における睡眠の媒介的役割」というものだ。

結果的には、魚の摂取は睡眠の質を良くし、睡眠の質がIQに影響を与えるかもしれないと言う、宙ぶらりんな結果だ。

まあコーホート研究であり、アンケート形式の研究内容らしく、ポッドキャストでも研究結果よりも研究の仕方に関しての質問が多かった。

しかし、この研究論文の緒言がかなりおいしかった。

この「緒言」とは、先行研究で明らかにされていること、されていないことを紹介し、研究目的を述べる項で、今回のこの論文の緒言では、過去のいくつかの研究を紹介し、オメガ3脂肪酸は睡眠に良い影響を与えるとクビキを打っていたことだ。

1.DHA(ドコサヘキサエン酸)は、睡眠ホルモンであるメラトニン産生を調整する。

2.サーカディアンリズムを規制し、睡眠機能を改善する。

3.加えて、必須脂肪酸はプロスタグランジンの産生に関与する。

4.大人だけではなく児童や幼児においても、魚摂取の増加と睡眠改善に重要な関連性が見られる。

 

以下、上記の4項目に少々説明を加えよう。

1.メラトニンは睡眠ホルモンで、夜暗くなり→体温が下がり→大量に分泌される仕組みであるが、これには前提条件がある。

まず、起きて陽の光を浴びてから、15時間後にメラトニン分泌が起こる。

この光に反応して、幸福ホルモンのセロトニンが分泌され、光が弱くなるにつれてセロトニンがメラトニンに変わる仕組みで、ギリシア神話のヤヌス神のようなものだ。

昼はセロ、夜はメラで、このホルモンの素材となるのは、必須アミノ酸の一つトリプトファンだ。

このトリプトファンが豊富な食材は、魚・肉・卵・チーズなど、アニマルベースがプラントベースよりも豊富であることは、吾人の記事ではもうお馴染みのことであろう。

論文が参考としている先行研究は動物実験であるが、メラトニンは哺乳類において松果体の主要な分泌物であり、この松果体の25%の脂質はアラキドン酸(オメガ6)とDHAが占めていて、「リポ酸素化とメラトニン合成は、n-3必須脂肪酸の状態によって相乗的に調節される可能性があります。」と結論付けている。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1388198109002480?via%3Dihub

つまり、ここでは魚に2ポイント付く。

まず1ポイント目は、メラトニンの素材となるトリプトファン(→セロトニン→松果体→メラトニン)は魚に含まれ、2ポイント目は、松果体の働きにアラキドン酸やDHAが関与し、メラトニン分泌に影響を与えているかもしれないことだ。

2.「 メラトニンは視床下部の視交叉上核(SCN)に位置する概日時計を調節している可能性があります。」https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15511698?dopt=Abstract

概日=サーカディアン時計は25時間周期で、地球の24時間周期とのズレを調整するためには、日の光がリセットボタンとなる。

これは、朝起きてから陽の光を脳に伝えることによって、セロトニンの分泌が始動し、それから15時間後にメラトニン分泌が始まるのだが、光の度合いは、なにも眩しいものでなく、曇り空の微小な光でも充分のようで、要は暗闇ではないことを脳に知らせることがポイントのようだ。

そして、この日向ぼっこを毎日20分~30分行うことが、サーカディアンリズムを整えることになる。

日中に充分なセロトニンを分泌すれば、夜のメラトニン分泌はほぼ保証されるが、その原料であるトリプトファンと潤滑油となるオメガ3脂肪酸の摂取が重要であることを見逃してはならない。

しかしながら、現代社会ではサーカディアンリズムを簡単に乱してしまう欠点いくつかあるがあるが、近年よく小耳に挟むのがブルーライトだ。

日本人がこのLED;Light Emitting Diode(青色発光ダイオード)の発明をして、燃費の削減や電球の寿命を延ばしたことで一種革命を起こし、赤﨑勇教授、天野浩教授、中村修二教授は2014年にノーベル物理学賞を受賞したが、現在ヘルスフード・グルやバイオハッカーが口を揃えて言うのが、ブルーライトのおかげで更にスマホ中毒やコンピューター社会が定着し、サーカディアンリズムを乱して不健康な人を増やしているということだ。

寝るまでブルーライトを浴びることによって、セロトニンが引っ込むことなく、充分なメラトニンが分泌されないので、睡眠の質が落ちているとのこと。

もちろん商売上手なヘルス・グルやバイオハッカーは、ブルーライトを否定するのではなく、逆手にとってメラトニンサプリ等を制作販売したりしているのだが、個人的にホルモンサプリには反対である。

10年ほど前に、アイルランドやイギリスではウェイプロテインが浸透しだし、この頃、筋肥大を促すにはテストステロンが必要とのことで、テストステロンサプリなるものが宣伝されたが、問題は、このホルモンを外から取り入れることによって、体はホルモン分泌を止めてしまい、結果的にはサプリに頼らなければ、ホルモンを得ることができなくなると習ったからだ。

ここでのポイントは、前項の充分な栄養摂取を基に、日々サーカディアンリズムを維持するように努めることで、ブルーライトに敏感に反応してしまう、または、ブルーライト漬けの仕事で満足な睡眠が得られない人は、就寝前にはブルーライトをなるたけ避けるようにすることがお勧めだ。

 

https://www.facebook.com/shinrigakunews/

https://www.nature.com/articles/s41598-017-17520-w

https://sleepdays.jp/articles/194

https://www.mylohas.net/2018/05/167469serotonin.html

「The New Primal Blueprint」Mark Sisson, primal blueprint publishing, audible 2017.  (Book shopへ移動)

 

【プロスタグランジン】

「アラキドン酸より生合成される生理活性物質であり、プロスタグランジン(Prostaglandin, PG)の代謝関連の誘導物質を含めてプロスタノイド(prostanoid)と呼ぶ。オータコイドの一種。発見当初、哺乳動物の精液及び精囊から単離され前立腺(prostate gland)由来と考えられ名付けられたが、後に誤認とされた。プロスタン酸を基本骨格として、五員環の酸化様式(A〜J)の違いや側鎖部の二重結合の違いによって分類され20種以上報告されている。血圧上昇・降下、子宮筋の収縮、血管拡張、平滑筋への作用、末梢神経作用、局所ホルモン様作用など、多彩な生理作用を示し…」

(薬学用語解説より引用 https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3

プロスタグランジン(PG)は局所的に生成され作用する生理活性物質(オータコイド)であるが、一応ホルモンである。

ちなみにセロトニンもオータコイドである。

プロスタグランジンは30種ほど存在し、故・早石修京都大学名誉教授は1990年代初頭に、脳で生成されるプロスタグランジンD2(PGD2)を発見した。

早石教授は酸素添加酵素の発見でも有名であり、プロスタグランジンはこの酵素から作られているので、よく研究をしていたようだ。

このPGD2は睡眠ホルモンで、脳を包むクモ膜で生成され、脳脊髄液に乗って脳内に入り、アデノシンを刺激して、アデノシンは視床下部前部の睡眠中枢に働きかけて脳を眠らし、起きる時は、視床下部前部→後部の覚醒中枢へと信号が移り、ヒスタミンが覚醒ホルモンとして働いて目が覚めるというメカニズムだ。

そして、この記事のポイントとして、PG生合成の原料となるアラキドン酸は、魚・肉・卵に含まれている。

 

過去に、局所的なPG発見とメカニズムの解明で、ノーベル賞を受賞した学者は数人存在していたが、誰も脳での存在を発見したことが無かったばかりか、その作用を解明したことは無かった。

それを早石名誉教授が、脳にはPGが無いのかと調査をしていたら、見事にPGD2を発見し、偶然的にも睡眠促進効果を突きとめた。

この睡眠効果を立証するために、「構造の似た化学物質にはよく逆の生理効果があるという」ことから、PGD2と構造のよく似たPGE2を注射したら、見事に覚醒作用が見られたのだ。

この快挙にノーベル賞が贈られないというのだから、個人的に、ノーベル賞選考委員の目先だけの判断と、ノーベル賞が全てでは無いとのシニシズム的な評価が強まってしまう。

しかしながら、2018年の医学・生理学賞受賞者・本庶佑(ほんじょ たすく)京大名誉教授は「早石道場」から巣立った一人で、師と仰ぐ早石名誉教授にお礼を言いたいと記者会見で漏らしたそうだ。

 

以上のことから、項目4番目の「大人だけではなく児童や幼児においても、魚摂取の増加と睡眠改善に重要な関連性が見られる」を、くどくど説明しないで良いであろう。

魚の脂には、循環器系や精神面の健康に効果があるだけではなく、人の一生を通して見れば、神経組織の機能と成長に重要な役割を演じ、殊に乳幼児の神経発達に大いに影響を与える。

例えば、6~18ヶ月での言語と視覚運動能力、2.5歳までの目と手の協調能力の発達、4歳時のIQ発達や、青少年期の認識能力や学業の向上、高齢者の認知機能低下と認知症の減少など、魚が良いことはほとんどの人が同意することであると思う。

 

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S108707921100092X?via%3Dihub

http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/kokoronomirai/kokoro_vol.9_2-13.pdf

http://brh.co.jp/s_library/interview/28/

https://www.sankei.com/life/news/181002/lif1810020012-n1.html

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