Patrick Holford&Jerome Burne の共著『The Hybrid Diet』は今年の3月に出版されました。
このハイブリッド・ダイエットは、ケトジェニック・ダイエットと低グリセミックロード・ダイエット;低GLダイエットの2つのダイエットを取り混ぜた食事を勧めておられる本です。
グリセミック・ロード、GLとはグリセミック・インデックスGIの実質的な糖質量で、GI;グリセミック・インデックスとは、炭水化物、糖質を摂取した後に見られる、血糖値上昇の度合いを示す数値で、このGI値に1食に摂取する糖質量または炭水化物量をかけて100で割った数値がGL値になるようです。
GI値×糖質量÷100
例えばオレゴン州立大学・ライナス・ポーリング研究所の資料を引用させていだだきますと、ドーナッツとスイカのGI値は76と同じでありますが、ドーナッツに含まれる糖質量は23gであるのに対し、スイカは11g。
この数値をGI値×糖質量÷100で換算しますと、ドーナッツは17、スイカは8のGL値となるわけです。
https://lpi.oregonstate.edu/mic/food-beverages/glycemic-index-glycemic-load#glycemic-load
まあこんな計算をするよりも、ドーナッツとスイカのどっちが不健康かは一目瞭然でありますが、ここでの要点として、GI値よりもGL値を基準にした食選びが、無難であるということです。
この本の作者ホルフォード氏は、1987年からこの低GLダイエットを推進されてきたようで、これまでにこの低GLダイエットで2型糖尿病の改善や、心臓病やガンの予防、減量など様々な実績を積み重ねてこられ、この実地的結果に、近年、科学が追いかけるようにして、低GLダイエットの有効さを研究解明し証明しているようであります。
これは丁度、ケトジェニック・ダイエットと似た経緯をたどっていまして、世界的に注目を集めだしたケトダイエットと低GLダイエットの研究解明が同時進行していることに、ホルフォード氏は無視することはできず、2013年ごろからの世界的なケトンブームに便乗されての出版であったと思います。
ところで、聴いたところによりますと、ケトンに関しての研究報告は、ここ数年、毎年300を超えているようです。
さてGI値ですが、70以上が高GI値、55-70が中、55以下が低GI値と一般では公認され、GL値は20以上が高、10-20が中、10以下が低GL値とされ、ホルフォード氏の低GLダイエットでは、1食につき10までのGL食品と1日に40までのGL値摂取を、許しております。
このことから、低GLダイエットは1日3食と2回のスナックと言うことで、これはちょっと食べすぎだろうとも思いました。
まあ、それでも体重が減り、健康になるのなら良いのですが、ボディービルダーのようなフィジーク・アスリートの食事のようで、実践するには難しいのではないかと思いました。
低GLの食品はどんなものかと言えば、茶色の穀物ですか、玄米や全粒粉パンや全粒粉パスタなど、それと野菜と果物です。
ケトジェニック・ダイエットからすれば、グルテンの入った穀類はダメで、果物もベリー類以外はNGですが、ホルフォード氏はパンもベリー以外の果物も量を規制した上でオーケーなようです。
それと肉に関しては保守的で、赤肉は未だにガンや腎臓障害の原因だと信じているようで、1日の蛋白質摂取量が体重1kgに対して1g、また肉よりも魚や野菜からの摂取を押してます。
しかも、この低GLダイエットとケトジェニックを組み合わせた比率が、3対1。
つまり月に3週間の低GLダイエットと1週間のケトジェニック・ダイエットを勧めておられます。
この比率を最初に読んだとき、読み間違えたと疑ったのですが、読み進めていくと、はっきりと低GLダイエットを3週間と書いてあり、ケトン派の自分からすれば、この比率は逆にするべきだろうと思いました。
こんな1週間のケトン食ではケト適応さえできず、ケトン体の恩恵を得られることはできないからです。
このホルフォード氏はケトジェニックに関しては深く理解されているのですが、40年近く低GLダイエットを推進されてきたので、かなりの愛着があって低GLダイエットに比重を置いたのだと思います。
また例えこの比率を逆にしても、1日3食は食べすぎで1週間の糖代謝は長すぎる。
しかしながら、このホルフォード氏のアイデアとの相違が、かえって、自分の模索していたダイエットに導いてくれたことは、否めない事実なわけです。
まあ、自分のダイエットを紹介しますと、月単位ではなく週単位で換算すると共に、1食で糖質サイクルを取り入れることです。
例えば、現在自分は1週間に12-14食でありまして、この食事数の4分の1に糖質摂取を組み入れると3食。
ケトン食の日は、昼にステーキと卵、夜にはサラダと魚貝類。
カーボロードの日は、朝か昼に軽いケトン食をして、午後に糖質ですが、まず、タンパクや脂質、または野菜を食べてから、糖質という順序を心掛けています。
血糖値スパイクを機にされる方なら、低GL食は良いでしょうけれど、豪快に寿司やドーナッツ、フィッシュ・エン・チップス、中華などを平らげると、思い切って糖質摂取をすることもあります。
ところで、この本の書評には、ケトジェニック界では有名な人たちの名前が見られるます。
例えば、オックスフォード大学のキーラン・クラーク教授。
彼女はヴィーチ博士と共に、アメリカの国防省から資金調達を受けて、最強のケトン・エステルを開発した方で、片やヴィーチ博士は、飢餓時の生理的反応を研究したジョージ・ケイヒル博士と、クレブス回路の発見者であるハンス・クレブス博士の下で、丁稚奉公してケトンと代謝を研究してきたケトン長老であります。
あと栄養士のゾーイ・ハーコンブ女史は、ティム・ノークス裁判でノークス教授の弁護に立った人ですし、同じく、作家・ニューヨーク大学の非常勤教授のニーナ・タイショールもノークス裁判での助っ人であります。
このハイブリッド・ダイエットの目的としては、スローカーブ、つまり複合糖質;繊維が多く、消化吸収に時間がかかる糖質とケトジェニックの双方に切り替えることによって、融通の利く代謝変換を発展させることにあると言っていることに、自分も同意です。
人類は生き残りをかけた進化の過程で、2つの代謝を構築してきたわけです。
糖代謝とケトン代謝でありますが、どちらが良い悪いと枠にはめる前に、我々の体はこの2つの代謝を使って進化をし、生き延びてきたことを、太古の地球にまで想像を膨らませて考えて頂きたくと、その日、その週の収穫に応じて、ケトン代謝、糖代謝と切り替わっていたことに気付かれると思います。
意識しようとしまいと、状況に応じて我々の体は反応し、ケミカルのレベルを自動調整する。
このことは生き延びようとするポジティブな働きであり、このハイブリッド代謝はごく自然な生理作用だと言えます。
しかし、近代になって糖代謝しかしなくなったことによってバランスが崩れ、肥満が増え、様々な慢性病が発症し、未だに毎日の様に肥満・生活習慣病が増え続けているのは、誰の目から見ても明らかなことで、それと同時にケトン代謝が理解され注目されだしたのは、単なる偶然ではないように思えます。
実際にこのハイブリッド代謝を行う、アスリートも増えているようです。
と言うことで、この「The Hybrid Diet」は、100%同意できるものではありませんが、学べるものが多いと言うことで、読んで損はないお勧めの本であります。