「彼らは全員熱心な、運動神経の優れた若者たちで、背が高く、引き締まった肉体で勇ましく凛々しかった、そんな彼らを私は男の中の本物の男として憧れた。
彼らは完璧に環境に適応し、全ての非常事態に対し混乱や躊躇すること無しに、いつ、なにをするのかを心得ていた。
彼らの沈着さと威厳は見事で、王侯貴族以上の確実なマナーを兼ね備えていた。
私は彼らの全ての動作を観察し学んだことによって、その後草原で幾多もの命拾いをしてきた。」(「A History of the Indians of the United States」A. Debo, London: The Folio Society, 2003. 『Lore of Nutrition』 より筆者訳、引用)
これは、後に米陸軍大将になるヒュー・スコットによる、インディアンのシャイアン族を記述したものである。
この頃のアメリカ北部の遊牧民プレーンズ・インディアンはバッファローを主食とし、世界で最も背が高く、健康な人たちであった。
このシャイアン族は1876年6月25日のリトルビッグホーンの戦いで、米軍カスター隊を殲滅した部族の一つで、米軍騎馬隊をバッファローを射止めるようにして戦ったと言われ、この年の秋であろう、陸軍士官学校を卒業したスコットは、戦後調査でモンタナ州のリトルビッグホーン川流域に派遣され、シャイアン族と接する機会に恵まれたようである。
またスコット大将は、シャイアン族の敵対部族であるクロウ族とも接し、週に1回バッファロー狩りを行い、居住地には至る所に干し肉が吊り下げられ、インディアンたちは健康と喜びに満ちた生活を営んでいたと紹介している。
この頃のプレーンズ・インディアンは完璧な肉食であった。
拙著『ケトン人』のマサイ戦士の項で紹介したことがあるが、イヌイット同様に肉主食であった頃のインディアンは、肥満も無く医者いらずの健康体で、だいたい医者自体が存在していなかった。
もちろんシャーマンは医師を兼ねていたが、その医術といっても単なる推測ではあるが、煙で患者を焙るか、マジックマッシュルームやサボテンを食べさすかで、慢性的病気に対処するものではなく、加えて慢性疾患自体ほとんど存在していなかったのだ。
それを、インディアンたちの生態系を崩すように、白人たちがバファローを絶滅へと追い込み、穀物主食の食生活をインディアンにもたらしてから、肥満が増え病気も増えたことは動かし難い史実である。
さて、先に19世紀のプレーンズ・インディアンは世界でもっとも背が高かったと述べたが、これまで吾人が理解していたことは、アウストラロピテクスよりホモサピエンスまでの進化の過程で人類は背が高くなり続け、現代人は石器時代のご先祖さまよりも、各段背が高いと信じてきたのだが、これは大間違いであったようだ。
この項の基底を為すティム・ノークス裁判で知ったことに、人類の身長は氷河期の終わりから低くなってきているとのことで、顕著なのがギリシア人とトルコ人で、氷河期の終わりには男子180センチ・女子 167センチが、紀元前3000年の農耕文化定着時には男子1 61センチ・女子 152センチと低くなっている。(「The Worst Mistake in the History of the Human Race」 By Jared Diamond, May 01, 1999, DiscoverMagazine, From the May 1987 issue. 参照)
ここ百年ぐらいは、次世代の平均身長が伸びていることは否めないが、更に驚くことには、頭蓋骨も石器時代のご先祖さまと比べて小さくなっているのだ。
脳の容量は、男子は1593㏄から1436㏄になり、女子は1502㏄から1241㏄と記録されている。(M. Henneberg, ‘Decrease of human skull size in the Holocene’, Human Biology 60( 3), 1988: 395– 405. )
おそらく上述の資料を基にされているのであろう、以前紹介した銀座クリニック院長福田一典医師の寄稿にも、より整頓された記述があるのでここで紹介しておきたい。
「高度の知能をもった現生人類に進化する過程で脳容積は3倍以上に増えました。チンパンジーの脳容積は500万年前と同じで、人類の脳容積が3倍も増えた理由は、人類が動物性食糧を多く摂取するようになったからです。
(中略)
人類も森林に住んでいたころは植物性の食糧、つまり糖質の多い食事でした。人類が肉食になったのは、約250万年前から氷河期が始まったからです。
(中略)
氷期の間は地球全体が乾燥し、降雨量が少なくなると大きな樹木は育たなくなり、草原が増えてきます。そこに草食動物が増え、草食動物を獲物とする大型の肉食動物が棲息するようになります。 人類はそのような獣を狩猟によって食糧にしてきました。動物以外にも、漁によって魚介類も多く摂取しています。間氷期になって気候が暖かくなって樹木が成長すると木の実や果物なども増えますが、基本的には肉や魚など動物性の食糧が半分以上を占めていたようです。
(中略)
農耕が始まってから、成人の平均身長は減少しているという報告があります。また、骨粗しょう症や虫歯も増えています。そして、農耕が始まって人類の歴史の中ではじめて脳の重量が減少していることが報告されています。
(中略)
農耕によって穀物が豊富になり、糖質が増えた分、肉や脂肪の摂取量が減ったからです。」(「人類は肉食で進化した」福田一典、Daiwa Pharmaceutical.Co.Ltd.より引用)
「脳の大きさの変化は、文化的変化の確かな指標になるとは考えにくい(筆者訳)」とHenneberg博士の論文では述べられているが、果たしてそうであろうか?
太古のご先祖さまよりも小さくなった脳で、こんなに急いで決断を下して正解なのであろうか?
吾人が幼少の頃から興味深々であったストーンヘンジやモアイ像などの巨石文化など、未だに謎だらけである。
ナスカの地上絵やピリ・レイスの南極地図、その他現代科学でも説明のつかないオパーツなど、世界中の博物館で保管され陽の目を見ることなく沈黙を守っている遺物は数多い。
脳は10%しか使われていないというのは、もう神話であると聞くが、では100%の能力が発揮されているのかと問えばそうではなく、実際には何パーセント使われているのかはっきり断定できていないのが現状である。
そこでもし、現代の我々の脳を300㏄でも大きくすればどうなるか?
また逆を言えば、現代の成人の脳から300㏄を引いた子供の脳と比べた方が、ある程度の違いが想像できると思う。
エジプトのピラミッドにしても、テクノロジーの発達と共にその細部が解明されているが、現代のようなテクノロジー機器を有することなく建造し、何千年後の我々を感嘆させる古代人の知識や知恵の深さは、我々が信じている以上に古代の人間は賢かったことを証明しているのではないだろうか?
農耕文化が浸透する以前の人類の脳は、現代人が想像できる以上の能力があったと思うのだ。
しかしながら、昔ながらの食生活をしていたマサイやイヌイット、インディアンは19世紀までは健康ではあったが、氷河期時代の人類並みの脳の大きさは無く、文明化されてもいなかったのは、吾人が主張する所の裏付けにはならないとの反論もあろう。
確かに痛い所であり、正直この反論を覆すほどの確かな意見を、吾人は現在ピン付けすることはできないが、文明開化には食を第一条件とした上で、個人、集団、環境等の多重構造の要因があるものであろう。
苦し紛れに、背丈に関しては食が影響していると言えても、脳の大きさに関しては、食だけではない他の理由が存在していたことは否めない。
例えば、脳や頭蓋骨が縮小したことには、重力や気圧の変化があったかもしれないし、環境変化と適応のための変異または進化(退化?)であったかもしれない。
それでも繰り返すが、現代技術でもってしても未だ解明しきれない世界中の巨石文化の意味深さと完璧さ、それを建造したケトン人先祖の関係は完全に否定することはできないであろう。
同時に負の部分として、いずれの文明も農耕文化を基盤としたものであり、諸々の複数の理由が重なって滅んでいることも、否定できない史実である。
古代エジプト人は、現代のアメリカ人のように肥満が多く、現代で診られる生活習慣病を罹患していた人が多々いたとも言われている。
歴史上最も古いとされる医学テキスト「エーベルス・パピルス」には、うつ病や認知症、ガン、虫歯などの記述がされ、糖尿病も記載されている。
またこの頃、近所のインダス文明でも、ヒンズーテキストで「ハチミツ尿」について語られているようで、昔の人は実際に味見をしていたようだ・・・?!!
これらのことから、生活習慣病は文明病と言っても過言ではないであろう。
さて、以上のことからこの稿で結びたいことは、子供へのケトン食の是非である。
ここで言うケトン食とは、1920年代に開発され小児てんかん患者に施されたものを含め、現今のLCHFやプチからスーパーまでの糖質制限食など、とにかくケトン体を誘発する食事を全て差す。
結論を言えば、一般的に子供にケトン食を日常化させても、健康を害することは無いと吾人は信じている。
これまで紹介してきたように、あの氷河期に人類はケトン人となって生き残り、種の保存を果たしただけでなく進化を果たしてきた。
よく子供から糖質を抜けば、栄養不足になり背が伸びず、力が入らないなどの反論を目にするが、それこそ間違ったケトン食を摂取してケト適応されていないか、人類生存の歴史を無視した無知な言い掛かりであると思うのだ。
世界的にケトン食反対論者の論点は、エビデンスの全体を公平に指摘するのではなく、都合の良い小さな部分だけを拾い、詳細を隠して批判するものがほとんどだ。
例えば上に述べたように、いんちき専門屋たちの場合など、ケト適応移行期の症状を槍玉にあげたり、ケト適応とグルコース適応の生理的反応の違いを充分に理解せず、グルコース適応の体の問題点をケトン体を無視して強調したり、低糖質と言いながらもケトン食にすれば高糖質の量であったり、脂肪にしてもトランス脂肪酸と健康な脂肪酸の違いも述べず、タンパク質にしても加工された肉と本物の肉との違いをはっきりさせないごちゃ混ぜ統計を基に批判を繰り返す。
しかもそのほとんどが感情的で、傲慢で、無知丸出しの馬鹿なのだ。
世界的な現象として、現実社会は児童の肥満が増え、生活習慣病罹患の年齢が若くなってきていることである。
糖質過剰の食生活こそが子供たちには良くないのであって、ケトン食こそが子供の健康と成長を助けるものであろう。
子供は代謝が活発なので(悪い例ではあるがマウスも同じ)、大人よりもいち早くケトン人になれるとの利点もあり、適度な糖質ならすぐに燃焼しきってしまう羨ましい代謝力を有している。
それ故にスーパー糖質制限や、ましてや断食などする必要は無く、大事なことは親子共に理解し、納得した上でケトン食に移行すると同時に、カルト宗教的な頑固さや偏狭さに硬まらずに、時にはご飯やラーメン、スイーツも食べるぐらいの柔軟さと余裕を持っていることも必要であろう。
今や小さなケトン人たちを再生し、人類進化の軌道修正を行う動きが人類誕生の地と人類移動の終着地で起こっている。
人類発祥地・南アフリカのノークス博士はエビデンス・ベースでケトン食を推奨し、奇しくも時を同じくして人類終着地・日本では江部康二医師の医学的バックアップのもと、三島学氏の三島塾が躊躇なくケトン食を採用している(実践的には三島塾の方が先にしていた)。
双方ともその著書で、ケトン食の子供への安全性を語る時、決まって人類進化から話を始め、三島塾長は子供の日常生活や受験への好影響を語り、自身の2型糖尿病改善の体験と共に生徒たちの様々な実証例も紹介されている。
三島塾では、もうすでに日常茶飯事なことで、疲れた生徒にバターを与え、眠気を吹っ飛ばし元気を取り戻すとの事例は、吾人にとっては、さながらアインシュタインのE=mc2のような重みがある。
文明病社会の現在では、砂糖を与えることが常識だが、これを栄養価のあるバターに切り替え(または復活させ)たことに歴史・栄養学・生物学等々多くの理論や深い意味が含まれているような気がするのだ。
現在小さな塾ではあるが、一見して受験目的のためにケトン食を主軸に、生徒の心身両面の健康を確立し、偏差値アップや合格の実績を積んでいるように見られるが、食の重要さを理解し改善をして学習をする教育組織は、世界でただ一つこの三島塾だけであり、受験だけではなく、今後生徒たちとその次世代への健康長寿、将来の生活の基本を正しく啓蒙している、食生活革命の松下村塾であると吾人は思い、期待している。
一方ノークス博士は、妊婦・胎児∼生後6カ月、授乳期の6∼12カ月、1∼3歳、3∼13歳、13歳以降の10代に対して、年相応の栄養を摂取できるように食事を紹介している。
そして、エビデンスを基にコレステロール神話の誕生とその間違いを指摘し、この間違いを基に構成された食生活ガイドラインの誤りも正し、栄養素と代謝、生活習慣病の原因や回避など事細かに紹介されている。
しかも、これら『Raising Super Heroes』や『Super Food for Superchildren』などの書籍は、いずれも裁判が進行する中で 出版されたものであり、ここにきちんと科学の裏付けがあると言わんばかりの攻撃であり、証明でもあった。
さて最近ではコスタリカ在住のアメリカ人一家が、Keto KidsまたはKeto Family なるポッドキャストやホームページを立ち上げ、ケトン食の食育が世界のここかしこで芽生え始めているほどだ。
それでも、必須栄養素でもない糖質が子供の発育に必要だと言い張るのは、よほど糖質に害された脳であり、やっぱり人類は氷河期以降、農耕の始まりから退化したのだと言わざるを得ないとは言い過ぎであろうか?
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